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【量子スピン】ダイマー相と磁化プラトーの学習メモ

固体中の局在スピンが集まった磁性体には様々な性質が現れます。中でも量子効果が強い一次元S=1/2ハイゼンベルグ模型(J1J2模型)ではダイマー状態が現れます。

J1J2模型

J1J2ハイゼンベルグ鎖のハミルトニアンは次で表されます:

\displaystyle{
\mathcal{H} = J_1\sum_{i}\left(S_i^{x}S_{i+1}^{x} + S_{i}^{y}S_{i+1}^y + S_{i}^{z}S_{i+1}^{z}\right) + J_2\sum_{i}\left(S_i^{x}S_{i+2}^{x} + S_{i}^{y}S_{i+2}^y + S_{i}^{z}S_{i+2}^{z}\right)
}

最近接・次近接相互作用で各サイトのスピンが結ばれています。ここでは反強磁性を仮定しています。

(図)

ダイマー状態

2個のスピン対で1重項を作っている

ダイマー相というのはスピンが2個ずつ1重項を作っている状態です。正確には完全な1重項でなくても、反強磁性相関の強いスピン対が規則的に配列することで非磁性的な状態になることをダイマー状態と呼びます。

(図)

S=1/2の2スピンの合成(反強磁性)

ダイマー状態は2つのスピン対で1重項を作ると述べました。そこで2スピンの合成について復習します。

S=1/2の2スピンの系のハミルトニアンを対角化すると、生じる状態は

  1. \displaystyle{\left|\uparrow\uparrow\right\rangle }
  2. \displaystyle{\left|\downarrow\downarrow\right\rangle }
  3. \displaystyle{ \frac{1}{\sqrt{2}} \left(\left|\uparrow\downarrow\right\rangle + \left|\downarrow\uparrow\right\rangle \right)}
  4. \displaystyle{ \frac{1}{\sqrt{2}} \left(\left|\uparrow\downarrow\right\rangle - \left|\downarrow\uparrow\right\rangle \right)}

があったわけです。このうち1,2,3の状態のエネルギーは縮退しており3重項(トリプレット)となっています。

一方で4の状態は他の状態よりもエネルギー低い基底状態となっています。この状態は縮退していないため1重項(シングレット)となっています。

ダイマー状態は非磁気的

1重項の状態に注目すると、基底がS=0の重ね合わせて表現されていることが分かります。すなわち、反強磁性においてS=1/2の2スピンから成る1重項は量子数Sz=0の状態です。

この状態で各サイトの\langle Sz \rangleを計算すると、全ての格子点でスピンの平均値が0になっていることが予想できます。こうした状態を非磁気的な秩序状態と呼びます。

ダイマー状態はこうしたSz=0(っぽい)状態をとるので、各サイトのスピンの平均値は0になる非磁気的な状態と言えます。

ダイマー状態にはエネルギーギャップがある

2スピンの合成で見たように、ダイマー状態は基底状態の1重項と励起状態の3重項があります。

1重項はSz=0の状態なので磁場には応答しません。一方で3重項の状態はSz=1,0,-1の3つの状態があるため、磁場をかけることで3重項のエネルギーが分裂します(ゼーマン効果)。

しかし1重項と3重項の間にはJに依存する有限のエネルギーギャップが存在します。そのため絶対零度では磁場をかけても、磁場がある値を超えるまでは磁化が現れません。

磁化プラトーダイマー状態

磁化曲線

磁性体に磁化を加えると、磁化はなめらかに増加していきます。磁場の関数として磁化を書いた曲線を磁化曲線と言います。

しかし磁化がある磁場の範囲で一定に成ることがあります。この範囲を磁化プラトーと呼びます。平坦な部分ですね。

磁化プラトーが起きるとき

実はダイマー状態でこうした磁化プラトーが見えます。実際にDMRGを用いて計算した例が以下になります。

(図)

ちょうど磁場が1/3の部分で平坦な箇所があることが確認できます。

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